焙煎(ばいせん)工程を見学し、ハンドピックを体験する

焙煎(ばいせん)工程を見学し、ハンドピックを体験する

スマイルすまい編集部

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手づくりの楽しみ コーヒー編 vol.1

平日の朝のダイニングに広がる豆の香り。週末のゆったりした空気の中で味わう至福の一杯。挽(ひ)きたて、淹れたてのコーヒーは、生活のリズムを整え、人生に彩りを与えてくれます。今回、「手づくり部員」が訪れたのは、中米産の高品質な豆を専門に扱う自家焙煎コーヒー店「Cafe Blanco(カフェブランコ)」。店主の井口さんに、ほんのひと手間でおいしさが増す、豆の挽き方やドリップのコツをレクチャーしていただきました。3回シリーズの初回は、プロのコーヒーロースターならではの焙煎工程の見学から始めました。

【手づくり部とは】
ハンドメイドやDIY好きのスマイルすまい編集部員が集まってできた、手づくり大好き集団。毎号、記事を通して「手づくりの楽しみや、自分で作ったものを使う幸せ」を皆さまにお伝えしていきたいと思います。

自家焙煎コーヒー店を訪問

手づくり部 今回は、豆の挽き方やドリップのコツを教えていただきたく、横浜市青葉区にある自家焙煎コーヒー店「Cafe Blanco(カフェブランコ)」にお邪魔しています。井口さん、どうぞよろしくお願いします。

井口さん こちらこそよろしくお願いします。

Cafe Blanco(カフェブランコ)

手づくり部 すてきなお店ですね。

井口さん 新婚旅行で訪れたモルディブをイメージしています。海と森を間近に感じられるコテージのような空間で、おいしいコーヒーを飲んでいただけたら、と考えました。

手づくり部 自分のお店を持つくらいですから、井口さんは昔からコーヒーがお好きだったのでしょうか?

井口さん 実は、以前は苦手でした。香りは好きなのですが、飲むと胃もたれしてしまうのです。けれど、ある喫茶店でたまたま口にした中米産の豆を使ったコーヒーが信じられないくらいおいしくて。フレーバーに甘みがあり、胃もたれはまったくなく、後味がずっと残り、とても幸せな気分に包まれました。以来、その味が忘れられず、コーヒーマニアに変身した私は、ついに会社を退職。専門店を開店するまでになりました。

手づくり部 一杯のコーヒーが人生を変えたわけですか。

井口さん はい。ですから、コーヒー好きの方はもちろん、苦手意識を持っている方にも、コーヒーの魅力や奥深さを知っていただきたいのです。

手づくり部 私も、コーヒーを飲むには飲むのですがインスタントが多いため、ハンドドリップについて一から教えていただけたらと思います。先ほど中米産の豆のお話がありましたが、カウンターにはさまざまな国・農園の豆が並んでいますね。

カウンター並ぶさまざまな国・農園の豆

井口さん 中米6カ国(グアテマラ、エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラス、コスタリカ、パナマ)の豆を主に扱っています。コーヒー豆は、生産国の違いだけではなく農園によって特徴が出ます。苦味が強いもの、フルーツのような酸味が強いものなど多種多様。お客さまからもよく、「こんなに味が違うものなんですね」と言われます。当店の看板商品は、苦味・甘味・酸味のバランスが取れたコスタリカの「ラ・ロマ農園」の豆。エルサルバドルの「シャングリラ農園」と人気を二分しています。

手づくり部 これらの豆は、どのように仕入れるのですか?

井口さん このように麻袋に詰められたものが横浜の港から届きます。ちなみにこの袋にはグアテマラ産の豆が70kg入っています。

グアテマラ産の豆70kgが入った袋

手づくり部 うわぁ、とても雰囲気がありますね。

井口さん で、こちらが封を開けて取り出した生豆(なままめ)です。生といっても、薄殻を取ったり、水分を抜いたりするなど、現地でさまざまな精製工程を経ています。

生豆

手づくり部 初めて見ました。形はコーヒー豆そのものですが、色は薄い緑色ですね。

井口さん これを焙煎することで、皆さんが知っている茶色になります。コーヒーならではの味や香りも、焙煎することで生まれるんですよ。

焙煎の工程を見学。その迫力に圧倒される

手づくり部 なるほど。そしてこれが焙煎機ですか。何とも言えない格好良さがありますね。巨大だし、かなり高価なもののような気がします。

焙煎機

井口さん はは。コーヒーのおいしさは焙煎で決まりますから、こだわらないわけにはいきません。アメリカから輸入したもので、外車が一台買えるくらいのお値段でした。

手づくり部 それはすごい! 焙煎が完了するまで、どれくらいの時間がかかるのですか?

井口さん 豆の種類や気象条件、それに焙煎度合いによって変わりますが、15~20分くらいです。では、実際に焙煎を始めてみましょう。まずは生豆を4kgほど投入します。

焙煎機に生豆を4kgを投入する様子

手づくり部 うわっ、豪快!

井口さん この後は、火加減や空気量の調整を手作業で行います。

手づくり部 自動で行われるわけではないのですか?

井口さん はい。コンピューターの入る余地はありません。というのも、豆によって硬さや性質、水分量などが違うため、同じ焙煎方法はないと言っても過言ではありません。その日の気温や湿度で微妙に火の強さを変えるなど、気が抜けない繊細な作業が続きます。数分置きに、「スプーン」と呼ばれる筒を抜いて焙煎度合いを確認する必要もあります。

スプーン

手づくり部 なるほど。定期的にこれを確認することで、次第に茶色がかってきて、水分が抜けていく様子も分かりますね。いい香りがしてきました。ところで、時折メモを取っているこのシートは何ですか?

焙煎の様子

井口さん 火力や空気の量といったデータを30秒ごとに記録しています。後で見返すことで、おいしく焙煎するコツや、失敗の傾向などが何となく分かるようになります。そうは言っても、数字だけを頼りに再現することはなかなか難しいのですが。

手づくり部 最後は、職人の勘と経験が頼りですね。

井口さん その通りです。さて、12分たちました。パチパチと豆のはじける音が聞こえてきたでしょう。これが1分半ほど続き、いったん静かになります。すると再び激しくパチパチと始まります。そこが釜出しのタイミング。では、いきますよ。

豆の匂いを嗅ぐ井口さん

手づくり部 おーっ、湯気とともに焙煎された熱々の豆が滝のように流れ出してきました。これは、テンションが上がります。

深煎りした豆

井口さん うん、いい感じ。深煎(い)りにしたので色も濃く出ています。

手づくり部 「浅煎り」「深煎り」とよく聞きますが、焙煎の工程で決めるのですか?

井口さん はい。熱の加え度合いによって、浅煎り、中(ちゅう)煎り、中深(ちゅうぶか)煎り、深煎りなどと表します。一般に、浅いほど酸味を感じやすく、深いほど苦味や香ばしさを感じやすくなります。

ハンドピックにチャレンジ

手づくり部 この焙煎したての豆を挽いて、粉にするわけですね。

井口さん そうですが、その前にハンドピックといって、悪い豆を取り除く作業をしないといけません。

焦げ気味の豆

手づくり部 悪い豆とは、具体的にどういうものを指すのですか?

井口さん 例えば、このような10円玉ハゲのような豆。この豆にとっては火が強すぎたのでしょう。焦げ気味で、お煎餅のような味になってしまいます。

虫食いされた豆

井口さん これは見た目が悪い。完全に虫食いですね。

破けてしまった豆

井口さん こちらは、破けてしまった豆。中身と分離したということは未熟豆だったということです。

色づきが悪い未成熟な豆

井口さん こちらは、他に比べて色づきが悪い未成熟な豆です。

手づくり部 こうした豆が混ざることで、どのような影響があるのでしょうか?

井口さん 単純に味が落ちてしまいます。取り除いた豆だけでコーヒーを抽出したところ気分が悪くなってしまったこともありました。地味で根気がいる作業ですが、おいしいコーヒーのためには大切な工程です。普通の人は滅多にすることがないと思いますが、せっかくですからハンドピックの作業を体験してみますか?

手づくり部 はい。でも、自信がありません。

井口さん 同時にいろいろな種類の悪い豆を取り除こうとすると混乱するので、最初は「色が違う豆」だけ、その次は「形のおかしい豆」だけ、と絞って作業するとやりやすいですよ。もっとも、質の高い豆なので、それほど悪いものは混じってないと思いますが。

手づくり部 分かりました。やってみます!

手づくり部 とても細かい作業で、目が疲れてしまいました。一杯のコーヒーの裏側で、こんな地道な作業が行われていたとは驚きです。

井口さん 次回は、焙煎したての豆を手挽きミルを使って挽く作業を行います。(vol.2につづく)

講師の井口直之さんと奥様

講師:井口直之さん

中米産スペシャリティコーヒーとの出合いをきっかけにコーヒーの魅力にはまり、奥様とともに一念発起して脱サラ。2015年5月、横浜市青葉区の閑静な住宅街に自家焙煎コーヒー店「Cafe Blanco」(カフェブランコ)をオープンさせる。毎日丁寧にローストした中米産の高品質な豆を販売しているほか、店内では一杯ずつハンドドリップした香り豊かなコーヒーや自家製ケーキを楽しめる。定期的にコーヒー教室も開催。

公開日:2017年09月05日

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