焙煎(ばいせん)された豆の挽(ひ)き方を学ぶ


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手づくりの楽しみ コーヒー編 vol.2

平日の朝のダイニングに広がる豆の香り。週末のゆったりした空気の中で味わう至福の一杯。挽きたて、淹れたてのコーヒーは、生活のリズムを整え、人生に彩りを与えてくれます。今回、「手づくり部員」が訪れたのは、中米産の高品質な豆を専門に扱う自家焙煎コーヒー店「Cafe Blanco」(カフェブランコ)。店主の井口さんに、ほんのひと手間でおいしさが増す、豆の挽き方やドリップのコツをレクチャーしていただきました。3回シリーズの2回目は、手挽きミルを使った豆の挽き方です。

【手づくり部とは】
ハンドメイドやDIY好きのスマイルすまい編集部員が集まってできた、手づくり大好き集団。毎号、記事を通して「手づくりの楽しみや、自分で作ったものを使う幸せ」を皆さまにお伝えしていきたいと思います。

電動ミルと手挽きミル、どちらが好み?

井口さん では、焙煎したての豆を挽く作業に移ります。コーヒーは挽きたてで淹れるのが一番。ご家庭にミルがあれば、挽きたて、淹れたての新鮮なコーヒーが楽しめます。

手づくり部 ミルには、電動のものと手挽きのものがありますが、どちらがお勧めでしょうか?

井口さん 電動ミルは手軽で、あっという間に挽くことができますから、毎日飲むような人にお勧めです。ただし、モーターが高速で回転し熱が発生するため、ほんのわずかですが香りが飛びやすいのが難点です。それに対して手挽きミルは、ゆっくり力を加えるため熱が発生しづらく、香りが飛びにくいと言われています。豆を削ったときの感触がダイレクトに手に伝わるのもいいところ。ただし、毎朝慌ただしい時間帯に家族4人分の豆を挽くとなると作業が大変だし、電動と比べ挽いたときの豆の粗さがやや不均一になるというデメリットもあります。

手づくり部 一長一短があるわけですね。

井口さん そのため、平日は電動ミル、余裕のある休日は手挽きミルと、使い分けるのもいいかもしれません。

手づくり部 生活に変化が出ていいですね。単なる道具ではなく、挽いている作業自体も楽しめますし。

井口さん 何より、手挽きミルには造形に味わいのあるものが多く、インテリアとしても優れています。ちなみに、これは私が最初に手にしたミル。木工作家さんに頼んで作っていただいた特別なモデルです。

手づくり部 本当に味があります。店内には他にも、さまざまなアンティークミルが飾られていますね。

井口さん 実際に使用しているものばかりなんですよ。食関連の展示会や旅行先、それに専門の業者さんに探してもらったりして集めています。購入したときは手頃だったのに、今は値段がつけられないレアなものもあります。

手づくり部 アンティークミルの魅力はどのようなところにあるのですか?

井口さん ミルによって、がりがり、ごりごり、ざくざく、さくさくと感触が違うなど、個性豊かなところでしょうか。イタリア製は細かく挽けるのでエスプレッソ向けだし、ドイツ製は耐久性に優れている。国民性なのか、車と似ていますよね。私は内部構造が見たくてつい買ってしまいます。「こうやって歯を支えていたのか」「面白い形のネジを使っているな」など、興味が尽きません。暇があれば分解して清掃しています。

手づくり部 好きなものに囲まれている仕事場って、うらやましいです。
 

手挽きミルで挽いてみる

井口さん では、実際に使っていただきましょう。1人分12gの豆を投入した後、しっかりフタを閉めます。

手づくり部 はい。計量スプーンがあるので簡単ですね。

井口さん ハンドルを時計回りに回してください。ポイントは、下に押しつける感じでゆっくり回すこと。急いで回すと、挽き目が不均一になりますし、熱が発生して香りが飛びやすくなります。

手づくり部 ごりごりとした振動が手に伝わってきます。手応えがあって気持ちいいです。

井口さん 手にダイレクトに感触が伝わるのが、手挽きミルの魅力ですからね。

手づくり部 あっ、ごりごりという音が軽くなり、手応えもなくなりました。削り終わったようです。昔使っていた鉛筆削りと同じで、懐かしささえ感じられる心地よさがありました。

井口さん では、下段の引き出しを引いてください。

手づくり部 うわー、いい香りがします。まさに挽きたての香りですね。

井口さん そうそう。挽き終わったらブラシやエアブロアーなどを使って清掃をしておくこと。次回、異なる種類の豆を挽く際、粉が混ざらないようにするためです。また、豆に含まれた微量の水分によるさびつきを防止するためです。

手づくり部 ということは、水洗いも避けた方がいいということですか?

井口さん その通り。鉄の部分がさびてしまいます。
 

挽き方でも変わってくる豆の味と香り

手づくり部 ところで、粗挽き、細挽きなどと言いますが、粉の粗さを調節することはできるのですか?

井口さん もちろんです。電動ミルは、つまみを合わせるだけですが、この手挽きミルの場合は、歯の部分を回転させることで調節します。

手づくり部 なるほど、きちんと調節できるのですね。

井口さん 実際に、粗さを3段階に分けて挽いてみましょう。手前から、粗挽き、中挽き、細挽きです。

手づくり部 ああ、本当だ。明らかに粗さが違います。粉の大きさによって何が変わるのですか?

井口さん 一般に、「粗挽き」はさっぱりした味に。「細挽き」はアイスコーヒーやカフェオレなど、濃く淹れたいときに適しています。そして、ペーパードリップに適しているのが「中挽き」です。試しに飲み比べてください。

手づくり部 ああ、本当。確かに細挽きの方が濃くて苦味があり、粗挽きの方がさっぱりしているような。

井口さん 注目すべきは甘さです。粗挽きの方は甘くないですか? 細挽きはやや渋めだと思います。

手づくり部 淹れ方以前に、挽き方でこんなにも変わるのですね。同じ豆でも、自分で味を調整できることが分かりました。

井口さん とはいえ、豆の味を左右する一番のポイントは焙煎です。そこで失敗したら、他ではリカバリーできません。ですから、信頼できるお店やブランドの焙煎豆を購入した上で、ご自宅で挽きたて、淹れたてを飲むのがベストです。

手づくり部 そういえば、先ほど女性のお客さんが「この豆は焙煎して何日目?」と井口さんに質問していたのが印象的でした。いままで焙煎して何日たったかどうかなんて気にしたことがなかったのですが、日数がたつことで味に何かしらの影響が出る、ということはあるのでしょうか?

井口さん 遅くとも、豆で購入した場合は1カ月以内に、粉で購入した場合は2週間以内に飲み切ること。そうでないと味や香りが落ちてしまいます。いずれも、密閉容器に入れ直射日光の当たらない場所で常温保存してください。期間内に飲み切れない場合は、フリーザーバッグなどに小分けにして入れて冷凍保存をしましょう。多少、味や香りの劣化を遅らせることができます。

手づくり部 分かりました。次回は、その淹れ方について教えてください。(vol.3につづく)

 

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講師:井口直之
中米産スペシャリティコーヒーとの出合いをきっかけにコーヒーの魅力にはまり、奥様とともに一念発起して脱サラ。2015年5月、横浜市青葉区の閑静な住宅街に自家焙煎コーヒー店「Cafe Blanco」(カフェブランコ)をオープンさせる。毎日丁寧にローストした中米産の高品質な豆を販売しているほか、店内では1杯ずつハンドドリップした香り豊かなコーヒーや自家製ケーキを楽しめる。定期的にコーヒー教室も開催。
http://cafeblanco.jp/

M0000OG1740(2017.08新)

スマイルすまい編集部

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