松浦弥太郎が語る「幸せに近づくと宇宙が助けてくれる」

松浦弥太郎が語る「幸せに近づくと宇宙が助けてくれる」

スマイルすまい編集部

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ボクとワタシの「幸福論」 第6話

「幸せだから笑うのではない。むしろ笑うから幸せなのだ」
こんな味わい深い言葉を新聞にプロポ(短めのコラム)として、毎日のように書き残した哲学者アラン。
そのプロポから幸福について書いた言葉だけを集めたものが、『幸福論』です。
「幸せ」をテーマに、さまざまな分野に取り組む人が、その人の『幸福論』を語ってくれる連載です。

プロポ90 「幸福は気前のいい奴だ」

岩波文庫『幸福論』より

自分が幸せに近づけば、宇宙は幸福を届けてくれる

「くらしのきほん」主宰/エッセイスト 松浦弥太郎さん

暮らしの中に、自分を更新させる習慣を

アラン「幸福論」の本

人生を生きていく中で何を大切にすべきなのか、死を目前にしたときに自分は何が幸せだったと感じるのか。そんなことを明らかにするために、今日という一日があるという感覚を持って暮らしています。幸せか不幸せか、それは目に見えるものではなく、また、人に決められるものでもなく、自分自身の心が感じるものです。僕は、どんな境遇に置かれた人であっても、毎日の暮らしに感謝できる気持ちを持つことが、幸せになるための第一歩だと思っています。

毎日繰り返される僕たちの暮らしの中には、数えきれないくらいの学びが満ちあふれているわけですが、昨日よりも今日、一つでも多く見つけようという積極性が大事です。そして、その継続があなたの幸せを求める感度をどんどん高めてくれます。参考までに、僕の暮らしの楽しみ方の一例をお教えしましょう。

それは「自分プロジェクト」。例えば、昨日よりもおいしいハーブティーを入れる努力をする、オフィスの近くで行ったことのないすてきなランチのお店を探してみるなど、何かを更新することに、日々、積極的に取り組むようにしています。誰かが何かをしてくれるのを待つのではなく、“自分”で意識して行動に移すことが大前提です。

食べる、着る、寝る――暮らしの中の何でも「自分プロジェクト」にできると思います。誰もがいつからでも気軽に始められる、自由でお金もかからない自分を更新する方法です。少しでも自分を更新できることが分かれば、今の自分を自己否定する勇気が湧きますし、いろんな矛盾も受け入れやすくなる。自分はこういう人間だから、これはこうだから、という凝り固まった決め付けから徐々に解放され、気持ちが軽くなっていきます。

今、僕は「くらしのきほん」というWebサイトの中で、1年365日、毎日ユーザーに向けて、朝、昼、晩と3回のメッセージを書き、お届けしています。よく「大変ですね」と言われますけど、暮らしの一つ一つに向き合って、自分を更新し続けたい僕にとっては、歯を磨くことも、お風呂に入ることも、全部大変なんですよ(笑)。何かしらの自分プロジェクトを思い付いたら、すぐに行動に移しましょう。それを毎日のto Doリストに追加して、習慣化していけばいいのです。

修復できる能力は、幸せへの希望である

本を開く松浦弥太郎さん

アランのプロポ90番の「幸福は気前のいい奴だ」が好きです。その一節に「愛してくれる人のためになしうる最善のことは、自らが幸福になることである」という一文があります。“自分は幸福である”と信じることができれば、たくさんの出会い、成長を伴う学び、心からの感謝など、“宇宙”は一言では言い尽くせない人生の素晴らしい贈り物をどんどん引き寄せてくれるということだと解釈しています。幸福は案外、気前がいいということです。

僕もあなたも世の中を構成する一員です。一人の人間の幸せが起点となって、それが少しずつ連鎖して、社会の幸せにつながっている。そう考えれば、日々、世の中に起こることに、無関係なことは一つもないのです。世の中の一員として、暮らしとどう接するか、出会った人とどう話すか、一つの仕事にどう向き合うか、そう考えると自分の枠を広げるための想像力が限りなく膨らんでいきます。そのときに必ず持ってほしいのは、「幸せになりたい」という強い気持ちであり、姿勢です。

人間は弱い生き物です。どんな立場の人であっても、時に迷い、失敗、過ちを犯します。僕がここでお伝えしたことも、あくまで姿勢の話であって、全て完璧にできているわけではありません。でも、人間には修復できる能力がある。物であっても、習慣であっても、人間関係であっても、どんなことでも本気になれば修復することは可能です。壊れたものを修復すると、これまで以上の愛着が湧きますよね。修復できる力の可能性を信じられれば、誰もが寛大な気持ちになれるのではないでしょうか。これもアランから教えてもらった、幸福に近づくための大切な希望だと思っています。 

中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」

語り手:松浦弥太郎

1965年、東京都生まれ。高校中退後、渡米。アメリカの書店文化に引かれ、帰国後、オールドマガジン専門店、トラックによる移動書店などを運営。2002年、中目黒にセレクトブックストア「COW BOOKS」を開業。06年から『暮しの手帖』編集長を9年間務め、15年4月「くらしのきほん」をスタート。「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、楽しさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。(株)おいしい健康の取締役。エッセイストとして著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会なども行う。

公開日:2017年03月29日

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