料理研究家 パン・ウェイが語る(後編)「今日の食事が、3年後のあなたをつくる」

料理研究家 パン・ウェイが語る(後編)「今日の食事が、3年後のあなたをつくる」

スマイルすまい編集部

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ボクとワタシの「幸福論」 第14話

「幸せだから笑うのではない。むしろ笑うから幸せなのだ」
こんな味わい深い言葉を新聞にプロポ(短めのコラム)として、毎日のように書き残した哲学者アラン。
そのプロポから幸福について書いた言葉だけを集めたものが、『幸福論』です。
「幸せ」をテーマに、さまざまな分野に取り組む人が、その人の『幸福論』を語ってくれる連載です。

プロポ70 「名馬 忍耐」 より
人生をとことん楽しむ

ディスカヴァー・トゥエンティワン 『アランの幸福論』より

料理研究家 パン・ウェイさん

自分の体の声を聞き、バランスよく食べる

蒸し器の上に置かれたアラン「幸福論」の本

健康で元気な自分をつくりたいなら、やはり食事は基本。一日の3食で、“五味五色”を取ることを心掛けましょう。ちなみに“五味”とは、味覚の「酸、苦、甘、辛、鹹(かん=塩からさ)」、“五色”とは食材の色、「緑、赤、黄、白、黒」を指します。これは全て、5つの内臓「肝、心、脾、肺、腎」に“帰経”(食材がこれらの臓器に影響すること)する栄養素です。毎日、五味五色を取りながら、季節ごとの味と色の食材を多めに口にすることが大切です。

簡単に説明しましょう。春は肝臓が弱くなる季節。緑の食材と、酸味があるものを。夏は心臓が弱くなる季節。赤い食材と、苦味があるものを。秋は肺が弱くなる季節。白い食材と、辛味があるものを。冬は腎臓が弱くなる季節。黒い食材と、鹹味のあるものを。そういった感じです。そして、季節の変わり目の土用が年に4回あります。特に夏と秋の間の土用は体調を崩しがち。土用の時期は、黄色い食材と、甘の食材を。実はそんなに面倒なことではありません。季節の旬の食材は自然と季節の色と味に合致するものが多いのです。

もう一つ、自分の体の声を聞くことも忘れないでください。ちなみに私は、毎朝歯を磨く前に、舌の状態を必ずチェックしています。細かく説明すると難しいので、これも簡単に。体調がいい日、悪い日の舌の形を覚えておくのです。例えば、舌の両側に歯の跡が残っていれば、体がむくんでいる証拠。そんな日は、水分を多く取るようにすると体調が良くなる、とかね。

同じように毎朝の小大便の状態、形、色、においなどもチェックしておくといいです。医食同源といいますが、自分の体の状態を知って、必要なものを食べていれば、病気を防ぐことができます。その時々に必要な食材や調理法など、詳しく知りたくなったら、ぜひ私の本を読んでみてください。毎日の食生活がもっと楽しくなりますよ。

無理をせず、楽しみながら体に良い食事を試してみてほしいと思っています。例えば、朝ご飯は質のいいものを、昼は自分の好きなものを、夜は少なめにして、朝と昼で足りなかった五味五色を加えて食べる。それだけでも消化活動が上向いて、体調がいい方向に変わっていくでしょう。でも私は、暴飲暴食も大好き(笑)。たまにはいいのです。

その後には罪悪感がくるので、翌日からはいい子になって、食事を控えめにしながら調整します。また次の暴飲暴食ができるように(笑)。小さなご褒美を自分で用意して、食べること自体を楽しまないとね。生徒さんたちにも、「ジャンクフードはなるべく控えましょう。ただし、私は食べないと死ぬなら迷わずそれを食べます(笑)。でも、口にするものが選択できる場合は、少しでも自分に合ったものをぜひ選んでください」というふうにお伝えしています。

“桜の戦士”たちに料理をふるまいたい

「幸福論」の本について語るパン・ウェイさん

今回の話をいただいてから、実は初めてアランの『幸福論』を読みました。この10年間、料理以外の本はほとんど読んでいないのです。私の場合、昔からこの道を目指してプロになったわけではなく、大人になってから自分が好きで始めた仕事。その上料理は本当に奥が深すぎて、勉強しても勉強しても間に合わない。今もって必死に学び続けている毎日です。

この仕事をできるだけ長く続けるためには、私自身も料理を楽しんで、元気でい続けないといけません。そうでないと自分の元気を生徒さんたちに分けてあげられないですから。あと気をつけているのは、人からされたくないことは、絶対に他人にはしない。何かが欲しいと思ったら、まず自分の方から提供する。そして、常に笑顔を忘れないこと。それが自分が幸せになるための鉄則だと思っています。

私の元気の源は、生徒さんの笑顔と、やっぱりおいしいものを食べること。食いしん坊なので、今でもお肉なら200gは軽くペロリです(笑)。人間はなぜ食べるのか? それは、元気で、笑顔で、幸福に生きていくために必要な行為だからだと考えています。子どもの頃、嫌な人がいるとおばあちゃんは「おいしいものを食べていないからああなるの」というのが口癖でした。誰でもおいしいものを食べたその瞬間は絶対に笑顔になるはずです。

普段から情緒不安定だったり、怒りっぽかったり、後ろ向きだったりする人は成長していく過程でおかしなものを食べたり、悪い人と付き合ったりしたせいで、本来の笑顔を忘れてしまっただけ。誰だって生まれた瞬間は、みんないい子。小さな頃から、贅沢ではなくてもおいしいもの、愛情たっぷりのものを食べ続けていたら、絶対に悪い人になんてならないと思います。同じように今日の食事が、3年後のあなたをつくっているのです。そう考えると、食べるものを選びたくなりませんか?

日本のラグビー代表の大ファンで、桜のユニフォームを20年前からずっと応援しています。2015年のワールドカップでは南アフリカに勝利するのを現地のスタジアムで観て本当に感動して泣いちゃった。ちなみに、海外の遠征試合を観に行く際は、外国の野菜事情がよく分からないので、サプリメントを必ず持参します。でも、戻ってきたらすぐにやめて普通の食事に戻す。

人間、いつかはサプリメントのお世話になるのだから、そのときまでは頼り切らないこと。なんでも柔軟に考えればいいのです。何があったって、空は落ちてきませんから(笑)。それはそれとして、いつかラグビー日本代表の選手たちに、食事を振る舞ってあげられたら最高ですね。もしもお声が掛かったら、全ての予定を投げ打って、すぐに作りに行く! 私の料理を食べたら次の日、絶対に元気になる。ノーサイドまで、全力で選手たちを走らせる自信があります(笑)。

パン・ウェイ料理スタジオ

語り手:パン・ウェイ

中国・北京生まれ。季節と体をテーマとし、四季に合った食生活を提唱。現在は東京・代々木公園スタジオにて料理教室を主宰。『きょうの料理』(NHK)などのテレビ出演や著作活動、講演会のほか、企業向けのレシピ開発やコンサルタントとしても活躍中。『にんにく・しょうが・ねぎ・とうがらしの薬膳レシピ―たっぷり薬味で元気とキレイ!』(農山漁村文化協会)、『中華小菓子:身体がよろこぶ小さくてかわいい甘味の楽しみ』、『毎日からだを調える中華スープ』(共に誠文堂新光社)など著書多数。

公開日:2017年12月08日

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