割れてしまった食器に再び命を吹き込む その① 食器の破片をきれいにつなぐ


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手づくりの楽しみ 金継ぎ編 vol.1

金継ぎ(きんつぎ)とは、破損した器を漆で接着し、金粉などを使って装飾する日本独自の修復方法。金繕い(きんつくろい)とも呼ばれます。茶の湯が盛んになった室町時代に始まったといわれますが、近年になって、物を大切に使い続ける精神が見直されてきたこと、また、漆の代わりに市販の接着剤を使う簡易的な方法も登場したことで、身近な修繕技術として注目を集めています。

今回、「手づくり部員」が訪れたのは、金継ぎ作家・漆芸家の深澤勇人さんのアトリエ。初心者でも簡単に体験できる「簡漆金継ぎ」に挑戦してきました。3回シリーズの初回は、破損した食器を接着するところまでをご紹介します。

【手づくり部とは】
ハンドメイドやDIY好きのスマイルすまい編集部員が集まってできた、手づくり大好き集団。毎号、記事を通して「手づくりの楽しみや、自分で作ったものを使う幸せ」を皆さまにお伝えしていきたいと思います。

伝統技術を手軽に体験できる「簡漆金継ぎ」

手づくり部 金継ぎという貴重な体験ができるので、楽しみにしていました。どうぞよろしくお願いします。

深澤さん こちらこそよろしくお願いします。今回、修繕したい食器を持参されたとか。

手づくり部 はい。二つ持ってきました。一つが、縁が欠けてしまったお皿。もう一つがマグカップです。こちらは、真っ二つに割れてしまいました。大切な方から頂いた物なので捨てられなくて。

深澤さん 修繕を依頼される方や、金継ぎ教室に参加される方の多くは、「高価な器だから」というよりも、「思い入れがある食器なので」とおっしゃいます。何でもないように見える器の一つ一つにも物語が詰まっているのでしょう。

手づくり部 なんだかとても深いお話ですね。

深澤さん では、作業を開始しましょう。今回は、漆と供に、市販の接着剤を使った「簡漆金継ぎ」という手法に挑戦していただきます。

手づくり部 「簡漆金継ぎ」ですか。「簡」というからには、そうではない、正式な手法もあるのですか?

深澤さん はい。本来金継ぎとは、天然の漆を接着剤として使用し、仕上げとして金粉などを蒔(ま)く日本古来の修復技術です。技術の修得はもちろん、作業自体にもある程度の時間がかかります。

手づくり部 その二つは、どのように違うのですか?

深澤さん 「簡漆金継ぎ」は、接着には合成接着剤を使うものの、上塗りに本漆を使います。一方、「簡易・簡単金継ぎ」は、市販の合成接着剤やパテを使用し、本漆は使いません。

手づくり部 漆がポイントなのですね。金継ぎというから、金を溶かして接着するのかと思っていました。

深澤さん いえいえ、金継ぎとは本来、漆を使って壊れた器を修理する技術であり、「漆」の作業が99%なんです。「金」は仕上げに使うだけです。

接着剤やパテを使って補修開始

深澤さん では、割れてしまったマグカップの接着から始めましょう。今回は、こちらの道具や材料を使います。接着剤は市販されているエポキシ樹脂系を使用します。

手づくり部 この黒い粉は何に使うのですか?

深澤さん 通常の接着剤は透明で、塗った場所がよく分からなくなるため、「松煙(しょうえん)」という顔料で黒く着色しておくのです。

手づくり部 塗ったところを一目瞭然にするのですね。

深澤さん はい。それでは、ヘラを使って接着剤をよく混ぜ、両方の断面に薄く均一に塗った上で貼り合わせてください。

手づくり部 できました!

深澤さん 次に、接着剤がはみ出したり、盛り上がったりした部分を削るのですが、接着剤が硬化するまで、しばらく待たないといけません。その時間を利用して、お皿の欠けを直しましょう。

手づくり部 はい。欠けた部分を、どうやって再生させるのか疑問でした。

深澤さん エポキシパテという粘着力の高い合成樹脂を使います。適量をカットしてよく練り、ヘラや指を使って欠けた部分に押し込むように埋めていきます。ラップを使えば、うまく形を整えることができますよ。

手づくり部 元のお皿の形と同じようにするのは、なかなか難しいですね。

深澤さん やや盛り気味にするくらいで構いません。パテが固まったら、削って形を整えますから。

手づくり部 安心しました。これくらいでいいですか。

深澤さん 問題ありません。それでは、硬化するまで40分ほど待ちましょう。

余分な接着剤やパテを削りとる

深澤さん そうこうしているうちに、マグカップの接着剤が乾いてきました。接着剤がはみ出したり盛り上がったりした部分を、彫刻刀などを使い削ってください。

手づくり部 分かりました。外側に比べて、内側は狭くて削りにくいですね。

深澤さん 先の丸い彫刻刀を使うと、やりやすいですよ。不要な部分を大まかに取り除いたら、耐水ペーパーで磨いてください。

手づくり部 目の細かい紙やすりですね。よし、できました。続いて、お皿の作業ですか?

深澤さん そうなのですが、まだパテが固まっていないようです。もう少し待つことにしましょう。

手づくり部 ここまで集中してやっていたので、一息つけてよかったです。

深澤さん この待っている時間って、とても重要だと私は考えています。何でもかんでも自分のペースでやろうと思わないで、時には物や相手のリズムに合わせる。これは、スピードや効率ばかり優先される社会の中で、とても大切なことだと思います。

手づくり部 確かに、そうですね。時間に追われるあまり、せっかちにあれもこれもと動いてはいけませんね。

深澤さん さあ、パテが固まったようです。彫刻刀を使って、盛り上がった部分を削り取ってください。お皿を傷つけないよう、慎重に。

手づくり部 削り過ぎてしまいそうです。

深澤さん そうしたら、パテを塗り直せばいいだけです。ただし、固まるまで再び40分待たないといけませんが。

手づくり部 それは、ちょっと……。自分はまだ修業が足りないようです。

深澤さん はは。大まかに削ったら、先ほどと同じように耐水ペーパーで磨いて形を整えてください。

手づくり部 できました。これだけで、ひと仕事終えた感じです。修復したという満足感があります。

深澤さん 金継ぎの魅力は、ここからですよ。次回は、接着した箇所に漆を塗る作業です。

手づくり部 いよいよ漆。楽しみです。(vol.2に続く)

 

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講師:深澤勇人
東京芸術大学工芸科漆芸専攻卒業後、同大学文化財保存修復彫刻研究室技術スタッフとして仏像の修復などに携わる。東京国立博物館にある修復所で漆工芸品の制作や、全国各地の寺社等における漆塗りや宝物制作に参加。漆芸家、金継ぎ作家として活動する傍ら、ウェブサイト「金継ぎ図書館 鳩屋」を主宰。金継ぎに関する指導、普及に努めている。
http://hatoya-f.com/

M0000OG1658(2017.07新)

スマイルすまい編集部

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