ハンドリップで淹れる特別な一杯を味わう


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手づくりの楽しみ コーヒー編 vol.3

平日の朝のダイニングに広がる豆の香り。週末のゆったりした空気の中で味わう至福の一杯。挽きたて、淹れたてのコーヒーは、生活のリズムを整え、人生に彩りを与えてくれます。今回、「手づくり部員」が訪れたのは、中米産の高品質な豆を専門に扱う自家焙煎コーヒー店「Cafe Blanco」(カフェブランコ)。店主の井口さんに、ほんのひと手間でおいしさが増す、豆の挽き方やドリップのコツをレクチャーしていただきました。3回シリーズの最終回は、ペーパードリップによるおいしいコーヒーの淹れ方です。

【手づくり部とは】
ハンドメイドやDIY好きのスマイルすまい編集部員が集まってできた、手づくり大好き集団。毎号、記事を通して「手づくりの楽しみや、自分で作ったものを使う幸せ」を皆さまにお伝えしていきたいと思います。

揃えたいのはドリップポット、ドリッパー、サーバー

手づくり部 いよいよ淹れ方ですね。

井口さん 繰り返しになりますが、おいしいコーヒーをリーズナブルに飲む一番の方法は、コーヒーを豆のまま購入し、ご自宅で飲む直前にミルを使って挽き、ペーパードリップで淹れること。お店と同等か、それ以上の味をお楽しみいただけると思います。

手づくり部 淹れ方にもいろいろある中で、なぜペーパードリップを勧めるのですか?

井口さん 必要な道具が揃えやすく、価格的にも手頃であること。それに、好みの味を作りやすいという点です。高品質の豆の特徴を明確に出すことに適しているとも言えます。ネルドリップやフレンチプレスなど、さまざまな抽出方法がある中で、ペーパードリップほど簡単で優れた方法はないと思います。

手づくり部 手軽ということですが、家庭でペーパードリップをするときに最低限必要な道具を教えてください。

井口さん ドリップポット(写真右)、ドリッパー(同左)、サーバー(同奥)は用意してほしいです。

手づくり部 ドリップポットですか。やかんではいけないのですか?

井口さん はい。やかんで沸かしたお湯をいったんドリップポットに移してから注ぐことで、お湯の温度を少し下げ、味をまろやかにすることができます。やかんから直接注いでいる方が多いと思いますが、沸騰したお湯は豆にとって熱すぎます。90℃くらいまで下げるといいでしょう。

手づくり部 それは意外。熱湯を注ぐものだと思っていました。

井口さん また、ドリップポットは注ぎ口が非常に細いため、弧を描くような注ぎ方など、お湯をコントロールしやすいのです。やかんだとドボドボと勢いがついてしまい、粉が撹拌(かくはん)され過ぎて味に影響が出てしまいます。

手づくり部 やかんからドリップポットに移す。このひと手間が大切なのですね。ドリッパーについてはどうですか?

井口さん 台形のものを使われているご家庭が多いと思いますが、私がお勧めするのは、プロがよく使う、穴の大きな円すい形のドリッパーです。

手づくり部 どう違うのですか?

井口さん ひと言で言えば流速です。台形の場合、穴が1つか3つかによっても差が出ますが、円すい形と比べてお湯がドリッパー内にたまりやすい構造になっています。そのため、誰がどのように注いでも同じようなスピードでゆっくりと抽出されます。そのため、比較的味や香りがしっかりした、安定した味を出すことができます。

手づくり部 なるほど。よく、分かります。

井口さん 一方、穴の大きい円すい形の場合、お湯がたまりにくい構造であるため、基本的には注いだお湯がスッと落ちていきます。逆に言えば、注ぐ量を調整することで落ちる速度が変わるため、味に変化をつけやすいのです。

手づくり部 だとすると、一般のご家庭では台形の方が安定していて、いいのではないですか?

井口さん 確かに、円すい形の方が難易度は上がります。ただ、今後、いろいろな味を追求したいという方にとっては、可能性を秘めた円すい形を試してほしいと思います。極論すれば、台形の場合、誰が淹れても70点のコーヒーができるのに対して、円すい形の場合、50点になる恐れはあるものの、うまくいけば120点が出せるかもしれないわけですから。

手づくり部 コーヒー好きにとってはやりがいがある話ですね。3つ目の、サーバーが必要な理由は何でしょうか?

井口さん 人数分のコーヒーの抽出量を正確に量るためです。なので、量が分かるものならビーカーのようなものでも構いませんよ。

手づくり部 分かりました。カップですがお勧めはありますか?

井口さん お気に入りのもので構いませんが、薄手のカップをお勧めします。液体がダイレクトに舌に乗るため、コーヒーの味を邪魔することがありません。もっとも、寒い時期、ご家庭でゆっくり召し上がるのであれば、冷めにくい厚手のマグカップもお勧めです。

手づくり部 そう言えば店内には、手挽きミル同様、アンティークのカップも並んでいますね。

井口さん アンティークの良さは、綿密に設計されているからでしょう、不思議と手になじむところです。それに飽きがきません。せっかく高品質のコーヒーを楽しむのなら、すてきなカップで飲んでいただきたいです。
 

いよいよペーパードリップに挑戦

井口さん 道具の説明が長くなりました。では、ペーパーフィルターを使ったドリップに挑戦していただきます。

手づくり部 まずは、やかんで沸かしたお湯をドリップポットに移すのでしたね。

井口さん はい。その前に、ドリッパーやサーバーを湯通しして温めておいてください。カップも同様です。理由は、せっかく淹れたコーヒーが冷めてしまわないように。特に冬場は欠かせません。

手づくり部 分かりました。

井口さん 次に、ドリッパーに密着するようにフィルターをセットし、1人分12g、もしくは2人分20gの粉を入れます。その際、軽く揺すって表面を平らにしてください。お湯が満遍なく行き渡るようにするためです。そして、お湯を細く、ゆっくり注ぎます。中心から始めて縁の少し内側まで注ぎ、30秒ほど蒸らします。

手づくり部 はい。

井口さん すると、粉の表面がムクムクと膨らんできます。焙煎後間もない新鮮な豆を使っている証拠です。

手づくり部 まるでハンバーグのようですね。こんな状態になるなんて知りませんでした。

井口さん 30秒ほどたち、豆が膨らみ切ったら蒸らしは終わり。ここからが抽出本番です。再びお湯を細く静かに注ぎます。中心から「の」の字を書くように小さく1周します。

手づくり部 真ん中に白い泡がプクプクと出てきました。豊かな香りも漂っています。

井口さん この白い泡は豆に含まれていた炭酸ガスです。泡の中央がしぼんできたら、再びお湯を細く静かに、小さく1周注ぎます。以降、白い泡の膨らみや大きさを意識しながら、お湯を注ぐ動作を2周あるいは3周ずつ繰り返していきます。

手づくり部 だんだんと注ぐお湯の量を増やしていくのですね。

井口さん はい。そうやって人数分の量を抽出し終えたら、ドリッパーに液体が残っていてもサーバーから外し、適当な受け皿に移します。最後まで出し切らないのがポイントです。

手づくり部 最後の一滴分まで落とさないともったいない気がしますが……。

井口さん 最後まで落とす方が大半だと思いますが、お茶の出がらしと同じで、この部分には渋味やエグ味が残りやすいため、出し切らない方がいいでしょう。

手づくり部 そうだったのですか。今回、初めて知ることだらけです。

井口さん 最後に、サーバーからカップに注いで終了です。カップの端の方に垂らしていく要領で丁寧に注いでください。一気に注ぐと泡が立ち、見た目にも美しくありません。

 

狂いかけたリズムを取り戻す作業

手づくり部 きれいに注ぐことができました。香りもとても良く、ほんのり甘味も。いつも自宅で飲んでいるコーヒーとはまるで違います。幸せな気分に包まれますね。

井口さん それはよかった。ただし、コーヒーに正解はありません。「こうでないといけない」という決まりもありません。今回、手順やコツをお伝えしましたが、あくまで標準的なもの。「もっと苦いのが好き」「酸っぱいのが好み」という方もいますので、自分の直感を信じて、自分なりの方法を模索してほしいと思います。

手づくり部 それを聞いて安心しました。自分なりにチャレンジして、リラックスタイムを作っていきたいです。

井口さん その通りです。仕事に追われ、ストレスを抱えている人が、休日にリラックスする。あるいは忙しい家事の合間、午後のひとときだけゆったりとした時間を過ごす。そんなふうに、自分が本来持っているリズムを取り戻す作業がハンドドリップなのだと、私は考えています。その時の気分に合わせて豆を購入し、ご家庭に持ち帰り、挽きたて、淹れたてのコーヒーを飲むことをお勧めしているのも、そのためです。

手づくり部 カフェで飲むコーヒーもおいしいですが、自宅で淹れるコーヒーもいいものですね。今回は、貴重な体験とすてきなお話、どうもありがとうございました。

 

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講師:井口直之
中米産スペシャリティコーヒーとの出合いをきっかけにコーヒーの魅力にはまり、奥様とともに一念発起して脱サラ。2015年5月、横浜市青葉区の閑静な住宅街に自家焙煎コーヒー店「Cafe Blanco」(カフェブランコ)をオープンさせる。毎日丁寧にローストした中米産の高品質な豆を販売しているほか、店内では1杯ずつハンドドリップした香り豊かなコーヒーや自家製ケーキを楽しめる。定期的にコーヒー教室も開催。
http://cafeblanco.jp/

M0000OG1741(2017.08新)

スマイルすまい編集部

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