吉本ばななと稲垣えみ子 対談「生きる楽しみ、生活の楽しみ その2」

スマイルすまい編集部

その1はこちら ┃ その3はこちら

生きる楽しみ、生活の楽しみ その2

「スマイルすまい」の“ボクとワタシの「幸福論」”に「手を動かす」という多くの方の心を温めたエッセイを書いてくれた吉本ばななさん。そして、同じコーナーにご登場いただいたのがアフロえみ子こと稲垣えみ子さん。実は、互いの大ファンということを聞き、早速対談をしていただきました。やはり、予想通りだったとてつもなく面白いお話をお届けします。

冷蔵庫は人生を腐らせる家電である!?

稲垣 吉本さん、洗濯はどうやっているんですか。

ばなな お風呂の残り湯に家族の洗濯物を全部入れて、“キン”で洗うんです。

稲垣 ええっ!? 金? ゴールド?

ばなな 微生物の“菌”ですよ(笑)。「美香さん、“金”をまいて~」「はい!」。そこまで叶姉妹じゃない(笑)。友人が教えてくれたんだけどね、この洗濯方法を知っちゃうと、今まで私は何をやってきたんだろうと、これまでいろいろなことを試してきたことがバカバカしくなっちゃった。

稲垣 その微生物、普通に買えるものなんですか?

ばなな ネットで買っています。そのサイトでは、排水口をきれいにするっていう使い方で売っていますが、私にとっては洗濯でいちばん役立ちました。シャツの襟とかに付けておくだけで本当に白くなっているの。1時間くらいで。しかも結果的には、市販の洗剤より安い。

稲垣 すごい! つまりは微生物が汚れを食べてくれるんですよね。

ばなな 食べてくれてるの。で、その手の製品はよくあるけど、落ちないじゃんってことたくさんあったから、この汚れの落ち方には驚いたというか感動して。

稲垣 へー、すごすぎます! 今日はこのお話を聞けただけでもう帰ってもいいぐらいだ(笑)。私、洗濯機をやめてから洗濯のやり方を真剣に探求中なんですけど、誰も参考になる意見を言ってくれないんですよ。まあ当たり前ですが、そもそも誰も手で洗っちゃいない。洗濯の話を私がすると、皆さんね、必ず、「あー、洗濯板でしょ?」って言うんですよ。

ばなな うははは(笑)。

稲垣 みんな使ったこともないくせにね(笑)。現代人の服なんてヤワいから、1回ゴシってやったら破けます絶対。

ばなな やっぱり、それは朝のドラマが悪いんだね(笑)。だいたいいつも、ちょっと戦前の話が入っているから(笑)。

稲垣 そういえば、吉本さんって掃除を箒に変えたのはいつからですか?

ばなな えっと、うちはね、いつからだっけ? けっこう前かな~。あ、でも私は叶姉妹でもあるから、あれも使っているんですよ。‎床拭きロボット。

稲垣 ええっと、床を掃くロボットとはまた違うんですか?

ばなな そうそう。でも、完璧には無理ですよ、自分が手で拭くほどには。あとつい最近、友人と話していて意見が一致したんだけど、掃除機のタンクみたいなところからごみのパックを出すのも嫌だし、パックを出した後のゴミを取るのも嫌だし、とにかくあの作業が嫌いなの。だから普段の掃除は箒です。

稲垣 嫌ですよねー。でも私は本当に愚かだったので、掃除機以外の掃除の仕方っていうのをまったく考えたことがなかったから、嫌だと思いながらもそれは運命的に受け入れねばならないと信じて疑わなかった。しかもうちの父は家電メーカーのサラリーマンだったので、家電製品はもう家族にとって大スターだったんですよね。

ばなな 分かります。

稲垣 でも実際に掃除機をやめて箒にしたら、「あの我慢は一体なんだったんだ?」みたいな。こっちの方が全然楽しいっ!てなりました。

ばなな そうそう、そういうこといっぱいあります。ちなみに、冷蔵庫の自動製氷機ってだいたい最初に壊れるでしょう。

稲垣 実は私は使ったことないです。あれ、壊れるとどうなるんですか? 

ばなな 当然、氷ができなくなる。でも冷蔵庫の製氷機って、いちばん掃除がしにくい。それで待てよ、と思って。容器に水入れて固めたら、普通に素晴らしい氷ができるじゃないかと。

稲垣 そうですよね。別にね。

ばなな 形はどうでも、丸ごと作って割ればいい。いろんな当たり前に気付いて、すごくいろんなムダなことやっていたんだなって。だって、結局、時間を買っているんですよね、私たちは家電から。手作業をできるだけしたくないという理由で。なのにムダな作業が多くなっていることも多い。

稲垣 はい、家電の進化によって、生活の中に本末転倒なことがたくさん起きていると思います。私の場合、本当に冷蔵庫を捨てたってことが一番驚かれるし、自分でも本当に一番ハードルが高かったんですけど。最近、思い付いた格言があって、「冷蔵庫は人生を腐らせる」っていう(笑)。

ばなな おおお! それこそ家電メーカーから怒られそうな……。

吉本ばなな

小説家 1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は30カ国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』(幻冬舎)『切なくそして幸せな、タピオカの夢』(幻冬舎)がある。noteにてメルマガ「どくだみちゃん と ふしばな」を配信中。『すべての始まり どくだみちゃんとふしばな1』『忘れたふり どくだみちゃんとふしばな2』(幻冬舎)として書籍化されている。『お別れの色 どくだみちゃんとふしばな3』が2018年11月23日に発売される。(プロフィール写真撮影:Fumiya Sawa)

稲垣えみ子

元新聞記者 1965年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、朝日新聞社に入社。大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て、朝日新聞論説委員、編集委員。アフロヘアと肩書のギャップがネット上で大きな話題となった。2016年1月、退社。同年4月、テレビ番組『情熱大陸』でアフロヘアや超節電生活をクローズアップされ一躍注目される。著書に『死に方が知りたくて』(PARCO出版)、『震災の朝から始まった』(朝日新聞社)、『アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。』(朝日新聞出版)、『魂の退社』『寂しい生活』(共に東洋経済新報社)、『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)がある。

スマイルすまい編集部

スマイルすまい編集部

暮らしがちょっとすてきになるアイデアや、住まい選びのヒントになるような記事を、心を込めてお届けしている編集部です。 ふとした時に思い出してもらえる、気軽に訪れてほんの少し幸せな気分になってもらえる、そんなサイトを目指しています。

RECOMMENDおすすめ記事はこちら