ボクとワタシの「幸福論」 第1話


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哲学者アランが編んだ『幸福論』

「幸せだから笑うのではない。むしろ笑うから幸せなのだ」
こんな味わい深い言葉を新聞にプロポ(短めのコラム)として、毎日のように書き残した哲学者アラン。
そのプロポから幸福について書いた言葉だけを集めたものが、『幸福論』です。
「幸せ」をテーマに、さまざまな分野に取り組む人が、その人の『幸福論』を語ってくれる連載です。
 

温かいスープのような本

Photoshot/PPS通信社

アランは、本名をエミール・オーギュスト・シャルチエといい、18世紀にフランス・ノルマンディー地方で生まれました。高校で哲学を教えながら、日曜日になると町の新聞にプロポと呼ばれるコラムを掲載。これが大変な評判を呼び、アランはその生涯で5000を超すプロポを書き残しています。その中から幸福について書かれたものを抜き出したのが『幸福論』です。このほかにも、『美学について』『教育について』など、テーマは多岐にわたります。
1925年の初版以来、現在に至るまで、世界中で読み継がれてきた『幸福論』は、彼の弟子である小説家アンドレ・モロワをして、「この世でもっとも美しい本のひとつである」と言わしめています。また、20世紀を代表する思想家シモーヌ・ヴェイユは、女学生時代ポケットにいつもこの本を入れていたと言います。19~20世紀のフランス・ドイツ思想の考察を続けている、明治大学文学部の合田正人教授は、「寒い夜に湯気を立てている一杯の温かいスープのような書物」となぞらえています。いろいろな生活の場面における幸福についてのプロポが全部で93編おさめられているこの『幸福論』は、どこから読んでも構いません。読む人にとっても、受け取るメッセージはそれぞれ。それでいいのだそうです。
 

アランの言葉はすっと胸に入り、いつまでも心に響く

アランの『幸福論』は、難解な哲学書ではなく、かといってハウツー的な書物でもありません。ごくごく日常の生活に即した考えや、誰にでもできそうな幸せになるための道を示してくれる本です。100年以上も前に書かれたにもかかわらず、今を生きる私たちにもとても役立つ視点がたくさんあります。例えば、「幸福を得るためには、人生の主役になって前向きに努力することが何より大切だ。もちろん努力は苦しいことでもある。しかし人は苦しさを乗り越えた時こそ、幸福を感じる。棚ぼた式の幸せはありえない」とアランは言っています。いわく「よい天気をつくり出すのも、悪い天気をつくり出すのも私自身なのだ」です。合田先生は、自分の心に響いたアランの言葉を抜き出して、自分だけの「幸福論」を作ることを勧めています。気軽に読み始めると、いつのまにか離せなくなる。それが『幸福論』との幸せな出会いなのです。
 

それぞれの幸せのカタチを持つために

この連載では、幸せと前向きに向き合っている方々に、アランの『幸福論』のとあるプロポを選んでもらい、それをテーマにインタビューをしたり、コラムを書いてもらいます。
それを読むことで、自分なりの幸せや幸福の輪郭が少し見えてくるお手伝いができたらと願っています。
次回は、明治大学文学部教授の合田正人先生にアランや『幸福論』について、もう少し詳しく教えてもらいます。
 

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参考文献
〇『心と身体に響く、アランの幸福論』明治大学文学部教授・合田正人(宝島社)
〇『NHK「100分de名著」ブックス アラン 幸福論』(NHK出版)

 

エミール・オーギュスト・シャルチエ(ペンネーム アラン)
Emile-Auguste Chartier(Alain)

1868年フランス北西部・ノルマンディー地方生まれ、1951年83歳で没。
パリ・ミシュレ校に進学し、哲学と文学の思想を学ぶ。24歳で高等師範学校を卒業、哲学の先生になる。ドレフィス事件では擁護派として論陣を張り、一躍有名に。1900年「ロリアン新聞」にアランという名で寄稿を始めるとともに、民衆のための勉強会を行う「民衆大学校」で教え始める。引退するまで、一高校教師を貫き、「天才であろうがなかろうが、毎日書くこと」というスタンダールの格言を胸に、旺盛な執筆を自分に課した。

 

監修:合田正人
1957年、香川県生まれ。一橋大学社会学部卒業。パリ第8大学哲学科留学。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。琉球大学講師、東京都立大学人文学部助教授を経て、明治大学文学部教授。哲学研究者。思想史家。著書に『レヴィナスを読む』(ちくま学芸文庫)、『ジャンケレヴィッチ』(みすず書房)、『吉本隆明と柄谷行人』(PHP新書)、『心と身体に響く、アランの幸福論』(宝島社)ほか多数。

M0000OG1400(2016.12新)

スマイルすまい編集部

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